Case Study

導入事例

Case Study 01

講師向けカルテシステムで生徒の習熟度を把握 AppSheetを学習塾運営に活用

株式会社ロジム 代表取締役 野村 竜一 様
ソシオネット株式会社 代表取締役 山下 聖

株式会社ロジムは、中学受験合格を目指す小学生をメインに、小中高生向けの学習コンテンツを提供する「学習塾ロジム」を運営。都内3か所の教室で授業を行うほか、オンライン通信講座や個別指導など様々なクラスを設けています。

既存の学習塾に異議を唱え、ロジカルシンキング(論理的思考)をベースとしたオリジナルの教材やカリキュラムを採用。テストや試験で良い点を取るためだけではない、一生ものの思考習慣が身につくと評判を呼んでいます。

同社代表の野村様は、ソシオネット代表の山下とともに既存システムの刷新や新規アプリ開発に取り組み、塾の運営に積極的に取り入れていらっしゃいます。今回のインタビューには山下も同席し、塾の教育方針やシステムの活用状況、ふたりの出会いから今後の展望に至るまで、たっぷりお話をうかがいました。

ロジカルシンキングを教育の現場へ

御社が運営している「学習塾ロジム」の特徴を教えてください。

株式会社ロジム 野村竜一様(以下、野村):2004年に、共同代表の苅野 進とロジムを立ち上げました。学習塾業界の「ここがヘン」と思うところを変え、既存の塾にないものを作ろうという想いが出発点となっています。

一般的な塾の授業というのは、子どもたちが横並びに座って先生の話を一方的に聞き、学んだことをテストや試験で再現する、その繰り返しです。「テスト問題を解けるようになる」ということに重点を置きすぎており、その状況は子どもたちにとってあまり良いものとはいえないと考え、授業の在り方から他の塾とは違う方式を取り入れています。

教室の座席はコの字型や丸形テーブルを採用し、授業の中にディスカッションを取り入れて講師と生徒の双方向のやり取りをとても大事にしています。また、国語や算数など基本の学科にプラスして「ロジカルシンキング」を学ぶ授業を設けているのも他の学習塾とは異なる点です。

なぜロジカルシンキングを授業に取り入れているのでしょうか。

野村:私と狩野は以前同じコンサルティング会社に勤務していたのですが、その当時世間で流行っていたのがロジカルシンキングでした。私もロジカルシンキングは非常に有用で世の中の役に立つ思考法だと感じていましたが、その上で、「もっと良い使い方があるのではないか」と考えるようになり、応用できる場所を探していました。それが教育の分野だったのです。

ロジカルシンキングの本質は、理由と結果をつなげて考え「物事の因果関係を作る」という点にあります。ところが、先ほどもお話ししたとおり、一般的な小学生の勉強は記憶の再現である場合が多く、因果関係を理解することによる発展的思考、まさにロジカルシンキングが足りていません。教育業界は門外漢でしたが、同じ想いを抱えていた苅野とともに、ロジカルシンキングを教育の現場に活かす活動をしてみようと思い、ロジムを設立しています。

もちろん、一つの目標として受験合格を目指したカリキュラムを組んでいますが、それがゴールではありません。子どもたちにはロジカルシンキングを学ぶことで「考える姿勢」そのものを身につけてほしいと思っています。

「ITは世界を平和にするもの」山下社長の言葉に惹かれた

ソシオネットとの出会いを教えてください。

野村:2015年ごろだったと思いますが、弊社のスタッフにシステムに関する相談をするなかで、山下さんを紹介してもらいました。どんな会社だろう、とソシオネットのWebサイトを見てみたところ、明らかに他のシステム会社とは違う雰囲気を感じたことを覚えています。当時掲げていた企業メッセージとして、山下さんは「ITは仕事を便利にするのではなく、世界を平和にするものだ」ということを語っていて、この人おもしろそうだな、と(笑)。それで私から連絡を取ったのが最初の出会いになります。

ソシオネット株式会社 山下 聖(以下、山下):それから現在に至るまで、様々なシステムの構築・立ち上げをお手伝いさせていただきましたが、最近はAppSheet(編注:Google社提供のノーコード開発プラットフォーム)を活用したアプリ開発がメインになってきましたね。受講管理システム、オリジナルの通信教材「まいにちロジム」の問題配信システムのほか、野村さんのアイデアから生徒さんを対象としたカルテシステムも開発しています。

カルテシステムについて、詳しく教えていただけますか?

野村:そもそもは、私の日常の出来事から生まれたアイデアです。以前は私も教室で授業を担当していたのですが、2015年ごろからは徐々に講師に任せ、裏方に回るようになっていました。現場に立つことが減り、それまでと比べて生徒さん一人ひとりの様子や授業の様子を把握しづらくなっていたと思います。

そんな折、我が家の愛犬がお世話になっている動物病院の取り組みを見て、ひらめくものがありました。主治医が不在の場合は他のスタッフさんに診てもらうときも当然あるのですが、いつどなたが担当されても犬の性格や往診歴、私とのやり取りの内容まで完璧に把握されていることに気づいたんです。

どうしてそんなことが可能なのかと尋ねてみたら、「スタッフ間でカルテを共有し、いつ誰が診ても対応できるような体制を整えている」とのこと。これだ!と思いましたね。この体制をロジムにも取り入れられれば、私はPCの前にいるだけで、授業や生徒さんたちの様子をリアルタイムに近いかたちで把握することができる、言うなれば“脳内ロジム”を作ることができると思ったんです。すぐ山下さんに「カルテシステムを作りたいです」と相談をしました。

山下:当時は、GoogleがAppSheetを買収してプラットフォームの提供を開始してから間もなく、弊社としてもまだ十分な開発実績を重ねられていないタイミングでした。それでも、野村さんが「やろう」と言ってくださったことで、二人三脚で開発にチャレンジすることができました。野村さんはもともと基本的なプログラミングの知識があり、かつ、呑み込みがとても早い方なので、スムーズに進めることができたと思っています。

野村:リリースしたカルテシステムは、主に現場の講師が記入しています。生徒一人ひとりのパーソナルな情報はもちろん、すべての授業後に授業の中で起こったことを生徒一人ずつに対して記入。昨日と今日で書いてあることが全然違うような、動的なカルテシステムとして運用しています。

AppSheetの活用シーン拡大 採用基準にも影響

カルテシステムの導入後、講師の皆さんの反応はいかがですか?

野村:授業ごとにカルテを毎回入力する必要があるため、業務量が増えたことを負担に感じている講師も少なくありません。しかし、自分の授業のフィードバックを受け改善に努めるのは、講師にとって重要なこと。日々の業務の一環としてしっかり取り組んでもらいたいと思っています。もちろん、前向きな意見も届いていますよ。カルテシステムで集まった情報を自身の授業や面談の資料として活用できるため、「指導の参考になるし、保護者対応にも活かせるのでとても良い」という反応も目立っています。

山下:カルテシステムの運用状況を見ると、講師の皆さんが非常に細かいところまで入力してくださっているのに感心します。「~だと思う」といった印象だけの情報ではなく、一つ一つを言語化してシステムに残しているので、情報のクオリティーが高く、資料としての価値を感じます。

野村:講師がカルテを書かずに帰ってしまうこともしばしばあるので、いかに書き漏れをなくすかが今の課題ですね。その対策にはGAS(Google Apps Script)を活用しています。前日に記入されたカルテの一覧を、翌朝9時に全職員にメール配信される仕組みを作り、誰がカルテを記入していないかを可視化・公然化することで記入を促すようにしています。

山下:その配信システムをはじめ、ロジムの現行システムで活用されている機能の9割近くは、野村さんがご自分で作っているんですよね。私が開発に携わったのは、データの置き方やシステム間の連携などベースとなる部分で、運用に関わる細かい項目や機能などはすべて野村さんが決めて導入していらっしゃいます。

野村:AppSheetのない一昔前なら、同じものを作ろうとしたら手間も時間も何倍もかかっていたと思うので、山下さんにはすごくいい世界を教えてもらえたと思っています。今、新しいスタッフの採用活動をしていますが、「AppSheetを使うことに抵抗がなさそうか」というのも一つの採用基準として考えるようになりました。これは私の中で大きな変化かもしれません。

今もシステムに関する相談があればちょくちょく山下さんに連絡をしていますが、私の「これをしたい」という要件に対し、山下さんは「他の方法もあるんじゃないか」「こっちを先に考えてから進めたほうがいいのでは」など、一回枠を広げる提案をいつもしてくれるんです。やりたいことを実現するための会話を大事にしてくれるのは、とてもありがたいことだと思っています。

山下:現在、ソシオネットではAppSheetを活用した「DXデビュー」https://socionet.co.jp/dxdebut/ というサービスを提供していますが、サービスとして体系化できたのは、野村さんとAppSheetについてあれこれ試行錯誤できた経験も大きいと思っています。結果的に、モニターになっていただいたようなものですから。とはいえ、どの企業様にも野村さんのような人材がいらっしゃるわけではないので、プログラミングの概念をある程度理解できる方であれば導入しやすいようなサービス設計にしています。

自分の力で考えて判断できる大人に成長してほしい

御社の今後の展望を教えてください。

野村:学習塾の業態として、ロジムは成熟期にあります。従来通り、新たな生徒さんを迎え入れて勉強に取り組める環境を整えていく、ということは続けていくつもりです。

その一方で、最近ではもっと新しいことを始めたいという気持ちも強くなってきました。たとえば「月額3000円で有名進学校に受かる」とか、いっそのこと「塾に行かなくても難関校に合格できる」など、学習塾の概念を壊し、業界の常識をひっくり返すようなことをロジムから提案できないか? そんなことを夢想しながら、周囲にアイデアを募っている日々です。「既存の塾にないことをやる」という創業時からの想いは変わっていません。

ロジムに通塾する生徒さんには、どのような成長を期待していますか?

野村:これも創業当初から変わっていませんが、生徒さんには物事を自分で判断できるようになってほしいと思っています。「判断をする」という行為は、人間に与えられた最高の権利です。少し俯瞰した目で世の中を見渡すと、楽しそうに生きている人は皆、自分で判断・選択をして、「人生は選択の連続である」ということを実践しています。ロジムでの学習やロジカルシンキングを通して、判断する習慣とツールを身につけた大人になってほしいですね。

そのために、授業の方針として、講師から「こういう風に考えるといいよ」と考え方を示すことは言わないように徹底し、基本的に教材や授業などのワークで伝えるようにしています。日々の授業が物事の因果関係を考えるトレーニングになり、いつのまにか子どもたちにロジカルシンキングが身につく、というのが理想です。

因果関係に光を当てるロジカルシンキングが身につくと、人の行動の因果関係を考える「思いやり」の気持ちを育むことにもつながります。それは子どもたちにとって、試験で点数を取るためだけの学習では得られない経験ではないでしょうか。

株式会社ロジム
https://lojim.jp/

事業内容:「学習塾ロジム」運営等、各種教育サービス業務